アステラス製薬

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新薬ができるまで

世界最高水準の品質で
くすりを作る

くすりは有効成分を化学的に合成した原薬をもとに製剤化を行い、利用しやすい形態にして患者さんのもとへ届けます。この一連の過程を担うのが研究技術職です。臨床試験では治験薬をタイムリーに供給する役割を果たし、商用生産に向けて工場への技術移管を進め、安定的な供給を目指します。スーグラのプロジェクトでは、Quality by Design と呼ばれる新しい概念を導入し、世界最高水準の品質を実現するために、高度なリスクマネジメントに挑戦しました。

臨床試験で求められる治験薬のタイムリーな供給

――お二人のプロジェクトにおける役割を教えてください。

  1. 米ノ井

    私の所属している合成技術研究所は、原薬の安定供給を使命としています。原薬はくすりの有効成分を化学的に合成したもののことで、臨床試験においても治験薬の原薬という形で供給しています。この使命を果たすためには、環境、安全、品質、コストに配慮した最適な原薬製造プロセスを構築するとともに、工業化のための研究も担っています。スーグラのプロジェクトにおいては、2004年に研究本部の創薬化学研究所からバトンタッチを受けました。

  2. 土肥

    製剤研究所の役割は、機能性が高く品質に優れ、かつ患者さんが使用しやすい新製品をタイムリーに臨床現場・医療現場に届けることです。私は臨床開発の第Ⅲ相試験(Phase3)が始まった2008年からプロジェクトに参加しました。

  3. 米ノ井

    スーグラの場合、Phase3でかなり大規模な試験を何本も同時並行で進めていたので、私たちの責任も大きなものがありました。

  4. 土肥

    そうですね。治験薬がないと臨床試験を進めることはできません。しかも、競合他社もほぼ同様の作用機序を持つくすりの臨床開発を進めているという状況があり、プロジェクトメンバーからの熱い期待も感じました。結果的に400万錠にも及ぶ治験薬を品質のトラブルなくお届けできホッとしました。

  5. 米ノ井

    安定した品質のものを供給しないと試験の結果に影響しますし、一方でタイムリーに供給できないと試験が遅れてしまいます。言葉にすれば“安定供給”の一語になりますが、それを実現するためには、私たちはチャレンジャブルなさまざまな取り組みをしています。

新製品では初めてQuality by Design を導入

――具体的にはどのような新しい挑戦がなされたのですか。

  1. 土肥

    Quality by Design という新しい概念に基づいた品質リスクマネジメントを導入しました。この概念はICH(日米EU 医薬品規制調和国際会議)が規定しているガイドラインに盛り込まれているものです。ICH は医薬品の規制当局や産業界の代表者が集まって議論する国際的な会議で、製剤についてはQ8、原薬の開発と製造についてはQ11 と呼ばれるガイドラインを定めています。今回、私たちはQuality by Design に基づいた承認申請を行いました。アステラスの新製品で原薬、製剤の両者に本概念を適用したのは、初めてのことです。

  2. 米ノ井

    Quality by Design は、科学的なデータに基づいて、これまでより精緻に品質保証のための計画を立案し、それを実行していくアプローチといえます。

  3. 土肥

    詳しく説明すると難しい話になりますが、米ノ井さんの所属する合成研究所としては、例えばどんなことに取り組んだのですか。

  4. 米ノ井

    わかりやすい例として、二つの取り組みを紹介します。一つはリスクアセスメントと呼ばれているもので、原薬の品質に関する重要な特性、たとえば不純物の問題に最も影響を与えている要因は何かを特定する作業を行いました。原材料・試薬・溶媒などの物質特性や工程パラメータなどがその要因となりうるものです。

  5. 土肥

    製造工程で不純物が混ざった場合に、原因を特定して改善しやすくなるわけですね。

  6. 米ノ井

    はい、そういうことです。もう一つ、デザインスペースの構築に取り組みました。
    例えば、従来なら反応温度を変えただけの実験だったものを、反応温度と反応時間などの複数のパラメータを変化させて多変量解析する実験に変えるというイメージです。原薬の製造には反応、晶析、濾過、乾燥といった工程がありますが、これら単位操作一つひとつについて深堀しています。大学では単位操作を突き詰めていくということはあまりないので、個人的にも興味深い仕事をすることができました。

  7. 土肥

    製剤研究所では、リスクアセスメントやデザインスペース構築結果に基づき、スーグラ錠の製造中にリアルタイムで品質をモニタリングする技術を導入しました。近赤外吸収スペクトル測定法(近赤外線を照射し、吸収された度合いの変化によって成分を定量分析する手法)を用いたもので、これを新製品の申請に用いたのはアステラスとして初めてのことです。このような新しい試みに挑戦するのに際して、当局(PMDA: 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)とも事前相談し、申請から承認までがスムーズに進むように努めました。高度品質保証を実現したことから出荷試験の一部を省くことが認められ、コスト削減にもつながっています。

アグレッシブに挑戦する企業風土がある

――仕事のやりがい、面白さをどんなところに感じていますか。

  1. 米ノ井

    スーグラのプロジェクトに参加し、Quality by Design に基づいて科学的な保証を行った承認申請ができたことは、今後につながる大きな自信になりました。

  2. 土肥

    そうですね。デザインスペースなどを含む高度なQuality by Design を実行できているのは欧米のメガファーマなど一部の企業に過ぎません。世界トップレベルの品質保証を実現できたことは、私にとっても大きなやりがいとなりました。この取り組みが社内でも高く評価され、「Special Recognition Award」を受賞したのも嬉しい出来事でした。

  3. 米ノ井

    私は2002年の入社で、今回のプロジェクトに参加する前は、まだ先輩に付いて仕事を教わる“見習い”みたいなものでした。初めて一人立ちして参加したプロジェクトで、こんなにも中身の濃い仕事に携わることができたのは幸運だったと思います。

  4. 土肥

    初めてだと、苦労が多かったかもしれませんね。

  5. 米ノ井

    実験室ではグラム単位で原薬を作っていますが、これをキログラム単位で作る規模にスケールアップしなければなりません。実験室では出ない不純物が出たり、反応速度が遅くなったり、いろいろ想定外のことが起きました。それだけに、工場の大きな反応機で数百キログラムの原薬を見た時は、とても感動しました。

  6. 土肥

    工場に技術移管していくところも私たちの仕事の重要なところで、製造現場の人たちとのチームワークは必要不可欠です。一体感を持ってやり遂げたときの達成感は素晴らしいものがあります。

  7. 米ノ井

    製造現場からは、設備を更新したいとか、パラメータを変えたほうがより効率的になるのではないかとか、さまざまな要望や提案がなされるので、そこに対応していくのも私たちの仕事です。

  8. 土肥

    製造現場では、研究段階で予知できなかったトラブルが起こることがあります。トラブルを、事前に検知する仕組みづくりをして、堅牢なプロセスを構築することが私たちの今後の課題といえるでしょう。

  9. 米ノ井

    スーグラのプロジェクトでは、新しい挑戦をしましたが、他部門から反対の声はありませんでしたね。

  10. 土肥

    実験室ではグラム単位で原薬を作っていますが、これをキログラム単位で作る規模にスケールアップしなければなりません。実験室では出ない不純物が出たり、反応速度が遅くなったり、いろいろ想定外のことが起きました。それだけに、工場の大きな反応機で数百キログラムの原薬を見た時は、とても感動しました。

※所属は掲載当時のものです